きみには会えない

きみは既に夢見たりするのかな
ぼくたちはきみには会えない
きみは大きな空を見上げて両手を広げ飛びたいと願うだろう
ぼくはきみが気づかない間に羽を捥ぎ取ってしまう
きみは僕の顔を知らない
ぼくはきみの顔を見ることなくその命を殺めるだろう
きみは本当は存在しない
ぼくはそれを願ってしまっている
きみは本当に存在しているか解らない
ぼくはその可能性を願ってしまっている
きみはぼくを恨み続けるだろう
ぼくはいつの間にかそのことを忘れてしまってまた同じことを繰り返してしまいそうな気がして怖い、恐い、コワイ、こわい…
きみは何も悪くはない
ぼくが全て悪いんだから
きみは眠り続けたまま、起きることはなく永遠に眠り続けることになる
ぼくはきみの存在を認めたくなくてそのことをきみに伝えない
きみは何も悪くない
ぼくたちは罪の意識に涙を流す
きみは許してくれるかい
ぼくはきみに許しを請う
きみはぼくであり、きみはぼくたちである
ぼくはきみに会うことが恐い
きみは今どこまで来ているだろうか
ぼくはきみから逃げ出したくて震える
きみはぼくたちの直そばに来ているかもしれない
ぼくたちはきみを受け入れることが到底できそうもない
きみはぼくを許してくれるだろうか
ぼくは取越苦労であることを願っている
きみが存在するならば
ぼくはきみに恐怖を覚えるだろう
きみが存在していなくても
ぼくは居ないきみを感じて恐怖している
きみは手を差し伸べてくれることを願っているかもしれない
ぼくは気づかないフリを決め込みたくて眼を背けてしまっている
きみは小さな鼓動ながらも命の音を聞かそうとしてくるだろう
ぼくは耳を塞いで眼を閉じ口を閉じ布団に潜り込み居なくなるのを待つだろう
きみは残酷なぼくを見て悲しく切なく思うだろう
ぼくはその想いが重くて考えないようにして生きていきそうな自分が今から想像出来てしまっている自分が酷く憎くて悔しく思っているのに、きみを生かす方法を考えようとはしない
きみはそんなぼくを呪うだろう
ぼくは死神だきみには会えない
きみはそんなぼくでも会いたいと願うかもしれない
ぼくはそんなきみを抱きしめることなく殺める死神
きみには会えないきみには会えないきみには会えない
ぼくはきみに会いたくない会いたくない会いたくない
きみには会えない会いたくない会っちゃいけない
ぼくは会えない理由と会いたくない理由は思いつくけれど会っちゃいけない理由を会いたくない理由とダブらせる
きみは生きたい活きたい往きたいと願っているだろう
ぼくは自分の犯した罪の意識を若気の至りとしていつか忘れてしまいそうな自分が想像できることがコナクソに腹立たしいクセに今の時点で現実逃避しているクソったれなんだ
きみに会っちゃいけない
ぼくはこんなにクソったれな人間だからきみに会っちゃいけない
きみはこんなクソったれな人間になっちゃいけない
ぼくはこんなにクソったれな人間だからきみに会いたくないと願う
きみはこんなクソったれな人間とは知らずにぼくたちに会いにこようとしている
ぼくはきみを生かすことはできない
きみはぼくでぼくはきみではない
ぼくはぼくたちはきみではない
きみはいったいどのくらいのことを理解して
ぼくたちにどのくらいのことを理解してほしいと願うだろう
きみには悪いけれど
ぼくは生かすことが出来ない
きみには会えない
ぼくはそのことを直接伝える勇気さえない
きみは愛情というものを知らずにいる
ぼくはきみが存在するかもしれないということを知ってはじめて愛情を感じた
きみが存在すると解ったらぼくはきみをどうするだろう
ぼくは存在しないきみに話をしている
きみは存在するかもしれない
ぼくはきみが存在しないことを願っている
きみが存在しないと解ったらぼくはどう思うだろう
ぼくはきっときみが存在しないことを喜ぶだろう
きみが存在しないとしたら
ぼくたちはどうなるのかな
きみが存在するとしたら
ぼくたちはどうするだろう
きみが存在するとしても存在しないとしても
ぼくはきみに会いたくないと願っている