小さな物語#13

三月十五日水曜日

 今日は卒業式。昔の歌ではないが、一体何を卒業するんだろう。と考えてしまう。特に仲の良い仲間とはこれから先次の道が違うが、もう二度と逢えなくなるわけじゃない。それは、特に仲の良いわけでもなかったクラスメイトも同じこと。ただ、もうこの学舎に来なくなるだけのこと…。中学校の全教科過程が終了しただけのこと。何が悲しいのか。
 少年はこの卒業式が何か意味があることなのかと考えていた。いや、それよりも、卒業式の練習というものが不思議だった。気持ちの問題であって、何も起立、礼、着席が揃っていなければならないという考えが不思議でしょうがなかった。確かに揃っていれば見た目は美しいかもしれない。しかし、そこに、気持ちや想いがあるのかどうかは疑問だ。と思っていたからである。
 その答えも出ないまま卒業式を終えてしまうことが、中学校過程最後にして解答欄を埋めれないまま時間切れに終わってしまったテストのような気がして気持ちが悪い。しかし、やはり答えは出ないまま「卒業生退場」の声と共に、一組から順番に拍手に包まれて体育館を出て行く。少年も列を乱さないように、後に続き体育館を出た。
 体育館の外では涙を流しながら友達や先生に挨拶するものや、やっと長い式典が終わったと伸びをする者まちまちだ。
 少年は辺りを見渡し、この狭いピロティに大勢の学ランやセーラー服で黒に染まることが息苦しく思い。駐輪場へと向かった。途中、眞子が既に片づけを始めているのが見えた。直接関係のない学年団である眞子は裏方になっていたようだ。
 眞子も少年に気づき、お互いに顔を見合うが、眞子は何も言わないまま、少年は後ろから流れてくる黒い塊に流されてしまうのだった。
「冷たい奴だなぁ。」
 と少年は思い、振り返ったが既に眞子は既に背を向けていたのが少し見えたが、直に黒い塊によって見えなくなった。その黒い塊の中からエンペラーとチョコボールが現れ、これから遊びに行こうぜと少年を誘うのだった。