小さな物語#4

一月二十二日土曜日

「ごみ箱どこ?」
「ん?ここ」
 と隣に持ってきていたごみ箱に先に自分が塵取りで集めたごみを捨てて少年に
「どうぞ」
 と促した。
 その会話の十分ほど前。掃除の始まりを告げる音楽が校舎に鳴り渡り眞子は担当場所へと向かい始めた。職員室を出ると、夫が倒れその介護の為に休暇を取られた小崎先生の代わりに、ピンチヒッターとして三年団で国語の教鞭をとることになった井上が先を歩いているのに気づき、声をかけた。
「井上先生。どうですか?三年団は?」
「えぇ。昨年の夏頃にも小崎先生の代打で着たことがありますから、少しは要領をつかめてきた感じです。」
「そう、それは良かった。」
「でも、私まだ教壇に立つと生徒の顔をちゃんと見れなくて…自分の教科書とかノートばかり見てしまうんです」
「それだと、生徒達の授業態度がチェックできないんじゃない」
「そうなんです」
 と井上は肩を落とした。眞子は笑って見せ、
「すぐに慣れるよ。そのうち私みたいに生徒からセクハラ質問されるようにもなるし」
「ええ!?」
 二人は笑いながら階段を上がり、井上は図書室の方へ、眞子はL.L.教室への方へと曲がった。