話合#3

出来る限り相手の術中にはまるまえにその場を離れるということはこの場合とても利口な考えであると自分は考えたのである。

 上記の文面は自分の【昨日】の日記の一文である。結論から申したら、
 まんまと相手の術中にはまってしまったわけだが。
 まぁ、つまり、そういうことである。いや、それだけじゃ何の説明にもなってやいやしないじゃないか。ということでちゃんと説明しよう。
 午後1時半頃、自分は約束の時間に会社へと出向いたのであるが、そこには社長の姿はなく、総務、経理担当の方によって、会社から程近い飲食店へと連れ立っていったのである。車中では気まずいと感じながらも自分の近状などの世間話をしながら行ったのだが、その時はまだこれから自分の身におこることなど知るよしもなかった。
 店に着くと連れてきれくれた方は店には入らないというのだが、一応社長が何処席に座っているのかを確認したのに店を後にした。自分は社長の座っている店の奥の方へと足を運ぶたびに、この話し合いは円満に解決できるのではないだろうかという淡い期待を膨らませながらいた。しかし、その淡い期待など社会人として人間としてまだまだ青臭い自分の考えが社会の中じゃ意図も簡単に潰され、揉み消されるなんて微塵も感じていなかったのである。


 席に着くとそこには、向かい側の奥の席から、社長の妻である専務、その手前に経営者の長である社長、そして、こちら側の席の奥には、初めて見る何者かも解らない存在の人物が腰掛けていた。自分はその何者かも解らない存在の人物の隣に腰掛け、座ったのだが、話はいきなりその何者かも解らない人物から切り出した。


(以下からは四人の会話とその状況補足説明だけで書くが、会話内容が全て一字一句同じものだとは言い切れない)


何者か解らない人物(以下:人物)「君はどこの高校?」
自分(以下:自分)「東高校です。」
人物「東高校っていったら、あの○○工業高校からずっ向こうに行ったところにある?」
専務(以下:専務)「いや、それは南高校、東高校って言ったらちょっとはずれにある…」
人物「あぁ、あのずっと向こうの方に行ったはずれにある、あのー、○○の近くの…」
専務「いや、それは○○高校、東高校はもうちょっとこっちの○○地区のほうの」
人物「(理解してない様子で)あぁ、あそこの。というたら、今まで一度も採用してない…?」
社長(以下:社長)「えぇ、今年*1初めて採用した。」
人物「東高校ではパソコン関係を専攻してたわけ?」
自分「いえ…」
社長「あ、そうそう、この人は(何者か解らない人物を指しながら)会社が人材を採用する時とか、こういった問題が起った時に間に入って、第三者の意見として客観的に意見を述べてくれる方やから」
自分「はぁ、そうですか…(しかし、この時自分は間に入って話をするというのに、自分に対して名刺を示すなどの自己紹介がなかったことに疑問に感じていた)」
人物「君は私とあったことあったかね?」
専務「いや、ないろ?」
自分「はい、初対面です。」
人物「まぁ、私は、○○工業とか商業高校とかの人と親しいし、自分が印刷関係の仕事をしていたこともあって、○○の間ではそういったことなんかの相談にのったりしているプロです。今回も労働局の署長と知り合いやから自分が間に入って事を円満に解決できるように話合いに参加させてもらいます。」
自分「はぁ。」
人物「まずは君がどのような経緯で辞めたのかは解らないけれど、自分は社長について話をするので、説明してもらえますか」
自分「え、話の前にちょっと確認させてもらっていいですか?先ほど、えーとお名前を存じ上げないのですが、社長の方から紹介してもらったときに、第三者の立場となって話してくれると言ってたんですが…。
社長「あぁ、すまん、すまん。この人は俺が会社として、自分の意見を言ったり、●●*2が自分の意見をお互いに言い合うと水掛け論になってしまうし、冷静に話合ができないから、俺が金を出して雇っている人で、間にはいって、両方が丸く円満に解決できるようにしてくれる人やから。」
自分「はぁ。」
(人物は詳しく思い出せないが自分について何かを説明していた)
人物「ところで君は失業保険の手続きは済まされてる?」
自分「いいえ、失業保険がもらえるようになるには最近だと結構かかるという話を聞いたので、それまでには就職したいとは思っているので、手続きしていません」
人物「それは、いかん。私はこの道のプロなんだけど、貴方の立場から言わしてもらうと、もらえるまでに就職が決まったとしても、残りの日数などを計算して幾らかは支払ってもらえるから。」
専務「そうそう、継続とかね。」
人物「いや、いや今は継続しないほうがいいですよ。」
専務「そうなの?」
人物「えぇ。それじゃ、来週の月曜日にでも職業安定所の方に出向いて、失業保険の届出を出しといた方がいいですよ。それで、ついでに、何かいい募集ないですかと尋ねられた方が」
自分「はぁ、解りましたそうしてみます」


人物「…で、君は何で労働局の方に訴えに行ったんですか?」
自分「はい、まぁ割増賃金がきちんと支払われていないので、それを指導して欲しいと頼みにいったんです。」
人物「それは会社にいる間にも話たんですか?社長とか他の人たちに」
自分「はい、請求したのは二回くらいあります。初めは、去年の12月頃に自分が遅刻が多いということで社長に怒られたのですが、その時に不満があるならば、言ってくれと言われたので、その時に…」
人物「その時社長さんはなんておっしゃられました?」
自分「その時は、お前らが能力がなくて遅くなってるのだからそんなんで残業代を支払うつもりはない。と。」
人物「その時は納得されたんですか?」
自分「はぁ、まぁ、その時はそういうものなのかもしれないなぁと思いました。」
人物「えぇ、例えば、出版社とか編集者とかっていうものはキチンとした時間というものが決めれないじゃないですか。工場の人ならば朝八時半にタイムカードをおして、時間を確認することが出来るけれど、出版社だとか編集者とかはそうはいかない。だからこの人はコレだけの時間をはたらいただろうということを決めて…」
自分「え、それはみなし労働制ってことですか?」
人物「いや、人の話は最後まで聞きなさい」
自分「はい(これは後で質問しよう)」
人物「で、例えば、この人やったらコレくらいの能力があるから、残業代をつけても良いかなぁっていうのはあると思うよ。でも、ちょっと悪い言い方ですけど、パソコンの知識もない貴方が入社してすぐに、短時間でデザインを出来るかといったら、そうじゃない。入社して何年もたっている先輩方が三時間で出来るのに、貴方だったら十時間かかってしまう。そういうものでしょ?だから、その人の能力に応じた金額を支払おうと思っても、そうしたら、今度は、一つの作業が十万円として朝八時半に出勤して短時間で作業を終わらすことが出来る人がいたら、その同じ作業を丸々一日かけて作業を終わらせる人がいたとしたら、それは同じ作業をしていたとしても、前者は大金を手に入れることができるけれど、後者の人は全然お金を手にすることができない。だから、一日の中で、これだけ働きましたというみなし労働をつけて給料を払っているんじゃないのかなぁ」
自分「いいですか?先ほど出版社や編集者はみなし労働制っておっしゃいましたけれど…」
人物「いや、みなし労働制とかって言うんじゃなくて」
自分「では、裁量制ですか?」
人物「いや、裁量制っていうわけでもなくて…」
自分「まぁ、どちらにしても、印刷業界がデジタルになってから、DTPと呼ばれるようになってから、DTPオペレーター、DTPデザイナー、DTPディレクターとかいますけど、自分達、DTPオペレーターっていう者は作られたデザインを、画面上に書き起こしたりする者は含まれないはずですけど*3
人物「いや、だから、みなし労働制でも、裁量制でもなくてね、そういった制度を会社の決まりとして行っているのかもしれないということで、自分も印刷関係の仕事をしていたりだとか、他のこの業界の会社の担当をしているけれど、どこでも、口が悪いかもしれないけれど、そういった法律スレスレのことを行っているものなんだよ。それは、会社としてそういった残業代を支払っていたら、会社がもたなくなってしまうからね。そういった決まりを会社がとっているところがほとんどで、本当はいけないのかもしれないのだけれど、社会としてそうやってやらなければいけないことが今の社会なんだよね。」
自分「はぁ。(裁量制とは認めたくないのか?なぜ、祭典限度の基準である労働基準法を守らないのだろう)それでですね、二回目に請求したのが、会社を辞めることを伝えに言ったときにですね、経理の●●さんて方がいるんですけれど、その方に、「どうして辞めたいのか」と尋ねられて理由の一つである、残業代が支払われないということを伝えたんです」
人物「それではどうしてその時に納得されたのに、労働局の方へ行かれたんですか?行かれる前に会社の方で誰かに相談しましたか?」
自分「えぇ、会社にいるときは、会社に労働組合がないじゃないですか…」
専務「(笑いながら)あんた、○○銀行じゃないんやから…」
人物「いやいや、奥さんちょっと待ってください。どうぞ(と自分に話続けるように勧める)」
自分「それで、組合がないから、代表に相談すればいいのかと思ったんですけれど、(専務に)ご存知だとは思いますけれど、制作室のチーフはぶっちゃけて埒が明かないじゃないですか、だから、直接言った方がいいのかもしれないけれど、調べたら、組合がないところで、代表者もいないまま一人で戦っても、労働組合法の団体交渉権だとかは適応されないし、結局のところ一人でワーワー叫んでるだけになってしまうのがオチだと知ったので、だったら、対等に話をすることが出来る方法として、国の労働局の方へと行って相談したんです。」
人物「そうやね、その考えは間違いではないと思う。だけど、なんで会社を辞められてから労働局の方に行かれたのですか?残業代が支払われなかったのがイヤで辞められたんじゃないんですか?」
自分「えぇ、それも理由の一つなんですけれど…。」
専務「この子は家の事情もあって辞めたんですよ。」
人物「あぁ、そうなんですか」




その間に他の話をしたのかもしれないが、自分の記憶力的に、場の雰囲気的に頭が混乱したり、冷静ではいられなくなりそうだったなどの理由で覚えていない。




人物「昔、自分が言われたことで、こういうふうに(人差し指を立て、親指も立て、残りの三本の指を握りながら)、相手を指すと、他の指が三本自分の方を向いてるでしょ?つまり、一をいうと、相手から三言われるということで、自分の落ち度が興奮して見えなくなってるのかもしれないよね」
自分「(ん?自分的には相手に一をいうと三返ってくるから、残りの一本の親指がどちらでもない方向を向いているように、前々から別の道を作っとくべきとか、逃げ道を用意しておくべきだとか、助けを求めるべきとか、第三者を呼ぶべきだとかっていう意味に見えるんだけど、それを言ったらきっと怒るだろうなぁ。やめとこ。ってか、一体この人は何を言いたいんだろう。全然第三者の立場でものを言っていないんじゃないのか?)」
社長「俺はこの人(人物)にお前は何もしゃべるなって言われてるんやけど、俺としては、会社として、まず第一にお客さんがあり、その次に労働者がある。だから、第一にお客様を喜ばせなくてはいけない。ニーズに応えなければいけない。そこで、儲けた利益を給料として、支払ったり、設備投資したり、もしも会社に何かあったらいけないからちょっとした蓄えも置いておかなければならない。それぞれ三分の一で考えているつもりやし、そう考えている。」
人物「どう?こうやってお互いに話あったことっていうのは今までにあった?」
自分「いえ、こういった具体的なことに関して話をするのは初めてです。」
人物「そうでしょ?私も前から言わなければならないと思っていたんですけれど、会社の経営者と労働者とでお互いの意見を話し合うような場所を作らなければならないと言おうと思っていたんですよ。今回、貴方がこうやって話し出来てよかっと思いますけど、どうですかね?」
自分「えぇ、お互いの意見っていうのを全部かどうかは判らないですけれど、こうやって言い合えることが出来ましたし、全てじゃないと思いますけれど、お互いの意見が理解できたんじゃないかと思いますけど」
人物「じゃぁ、どうですか。ここは円満に社長に今後のことは任せるということで」
自分「え?どういうことですか?」
人物「だから、これから君もまだ19、20歳なんだから、まだまだこれからがあるでしょう。自分達は君を一人の大人として話をさせてもらってるんだけれど、その先輩からのアドバイスとして、言わしてもらうけど、こうやって一人の人間の為に大の大人が三人も集まって君の為に意見をいってくれるってことはこれから先ないんじゃないのかなぁ。」
自分「えぇっとちょっとスイマセンけど、先ほどから円満に解決するっておっしゃられていますけど、自分の理解能力がないのか、どれも抽象的にしか解らないんですけれど…。」
人物「だから、」
社長「この人が言うことは、お前が俺をどのくらい信用しちゅうか知らんけど、お前も就職して一年ちょっとおって俺がどんな人間なのかくらいは解っちゅうと思うけど、その俺を信用して、今後のことは俺に任してくれって言うがよ」
自分「…(朝と晩で言っていることが違う人間を信用しろってか?)」
人物「君はどうして欲しいが」
自分「えぇ、先頬言われていたようにですね、そういう制度で会社経営をしているのならば、自分が就職の面接の際にちゃんと口頭や文面で説明して欲しかったですし、そういった文面をちゃんと書かれてある契約書を交わして納得して判を押して就職したかったですし、就職してからも、そういった文面をいつでも見れるように、労働規約っていうものをきちんと制定して欲しかったです。そうすれば…」
社長「あのう、●●くんよ、それは、俺から言わしたら、大人から言わしたら、結果論じゃないかえ?」
自分「…そう…ですね…。」
社長「俺はもし、お前があの面接の時に、どういった内容で経営して、残業代がちゃんと支払われるのとかって聞いていたら、俺はお前を雇ったりしてないぞ。俺がお前を雇ったのは、●●の一言や。面接の時とか、実技試験とかはお前も知ってると思うけど、大したものは作れていなかった。お前が作ったモノを見てみたけど、やりたいことは解るがそれがちゃんと形になっていなかったろうがえ?でも●●が「きっとやりたいことがいっぱいありすぎて、時間的に形にならなかったんだと思います。もしかしたら、化ける人物かもしれませんよ」って言ったから俺はお前を雇った。だけど今こうしてお前は後足で水かけて…」
人物「社長!(止める)」
自分「…。(それも結果論じゃん。)」
社長「お前はどうしてほしいがな。金か?」
自分「いや、金とかそういうんじゃなくて…自分は労働局っていう役所の力を借りてですね、他の人の為にもっていうか、そういうんじゃないんですけど…」
社長「ほう。ヒーローにでもなったつもりかえ?」
人物「だから、二人だけで話してたら水掛け論になってしまうでしょ?」
社長「ええき聴いてくれ。お金じゃないっていうのならば一体何なや?金やろうがえ、労働局に行けばコレくらいはもらえるだろうという算用があったんやろうがえ?」
自分「…。」
人物「因みに社長、ボーナスっていうものはもう出たんですか?」
専務「いやまだ」
人物「それじゃ、八月くらいにでも?」
専務「いや、今月の予定ではあるんやけど、不景気やきねぇ。」
人物「それじゃこの方はボーナスを貰っていないと?」
専務「えぇ。」
社長「コイツは始め七月までは居るって言いよったからその時のボーナスはAクラスで出すつもりでおったんよ。でも六月で辞めるっていうから、受け取ってない」
専務「家の方で事情があったんやと」
人物「それで社長、もしこの方がいましたら、どのくらいのボーナスがでたんですか?」
社長「五万…十万…十五万くらいか…。」
人物「ほう、そんなにも、ねぇ、君ね、私は始め五万でもいいくらいじゃないかと思ってたんだけど、十五万円やと。」
自分「はぁ。」
社長「俺はお前を今まで、昇給もボーナスもAクラスでつけてきた。確かに他の何年もやってる人と比べたら給与は確かに低いけど、昇給やボーナスでは俺はお前をAクラス評価してきた。俺一人で判断すると、俺の好き嫌いがでてくるから、専務と、常務と三人で評価しているんやけど。さっきも言ったように、お前は入った時は全然やったけど、入って一年ちょっとして、色物のチラシをやったり伝票もやったりしてきて力をつけてきて、最後は頁物の柱の一本になる手前まで来とったし、お前に負担がかからないよに、最近では●●くんもお前につけたろうがえ。そういった思いをお前は知らんろ?」
自分「えぇ」
社長「そういった俺の思いや、わざわざ松山から出てきて間に入ってくれているこの人の思いや、役所まで引っ張り出してきて、お前はそういった、全ての人たちをひっかき回してるんやぞ、だからそれぞれの顔を立てて、ここは解決しようとしているのに、主人公のお前が今ここで答えをハッキリださなかったら、その人たちのプライドまでもを傷つけてしまうんぞ。」
自分「えぇ、そうかもしれないですね。こうやって話合の席を設けてくれたことには感謝しますけど、今自分自身が頭が混乱していたりして、今すぐここで答えを出すことはできないんですけど…。」
人物「あなたねぇ、私もこのあと労働局の方へ言って署長と話をしなくてはならないんですよ。私の権限で労働局に会社が詳しく調べられるのをストップしてもらってるんです。なのに、ここで答えを出してもらわなければ、私がこれから労働局の方へいって報告したときに、話合をしましたけど、答えは出ませんでしたと言ったら、なんでわざわざ松山からでてきて、話して、なんの進展もないがなえ?って言われたら、それまでですからねぇ、私の立場もないですし、別に、社長さんも経営者ですし、私もプロですから、戦うことを恐れていっているんじゃないですし、戦うのならば、徹底的に戦いますよ。」
社長「おい、●●くんよ、俺らはお前を一人の大人として話をしゆんよ。金じゃなかったら何で。言ってみいや」
自分「えぇ、金っていうか、そのぉ」
社長「金やろうがえ、労働局に行ったらこれくらいは貰えるだろう。という算用があったき労働局へ行ったがやろうがえ。俺らも大人やきよ。お前がどんな考えがあるかくらいは解るわえ。ヒーローのつもりかもしれんけどよ。」
自分「えぇ、ぶっちゃけて言いましたら、お、お金…です…。」
社長「そうやろうがえ、金やろうがえ。で、幾らながなや。お前が欲しい金は」
自分「えぇ、キチンとした時間が解るものがないのでハッキリした数字ではないんですけれど…」
社長「いいき言うてみろや。」
自分「自分がメモしていたヤツを自分なりに計算したんですけれど、メモしていた期間だけでいいましたら、70万くらいはあるかと…。」
社長「ななじゅうまん!?(笑う)お前それくらい労働局に行けば貰えると思ったんかえ」
自分「えぇ」
社長「それは、お前が遅刻したり、ミスしたりなどの損害を差し引いて言いうがかえ?」
自分「いえ」
社長「そうやろうがえ。お前は自分の立場でしか物事を考えてないし、言ってない。お前からしたら、それが理想論であり、確かながかもしれんけどよ」
自分「…。」
社長「えぇよ。そしたら、それっぱぁを労働局にいうて請求したらええわえ。その代わり、こちらもお前が遅刻したり、ミスを犯したりした損害をいうわえ。こちらも、戦うならば、それなりのことはするし、立証させないかん。第一に、お前はその残業とったていうことを立証できるのかえ。」
自分「それは、難しいかもしれません…」
社長「そうやろうがえ。お互いに立証させることは難しいかもしれんけど、お前が戦いたいのならば、戦ったらえぇわえ、その代わり、今後お前が就職することが難しくなるかもしれんぞ。」
専務「そうそう、聞いてくるきね。」
人物「ちょ、ちょっと…。」
社長「それでもえぇがやな。それやったらそうしたらえぇわえ」
人物「ちょっと、互いに、こうやって水掛け論になってしまうし、どうかえ?ここは君の判断一つやと思うんやけど。社長の方も十五万で話つけてくれるっていうし。もし、ここで君がそれを断るのならば、それでもえぇんよ。裁判でもなんでも起したらえぇよ。その代わり君は、その選択によって、一生戦いつづける人生になると思うよ。人生の先輩として、私も同じような問題を何件も見てきたからいうんやけれど、どうやろ?ここは若者らしく、君は今回坂本龍馬のようにはならなかったけれど、その代わり、ここで円満に解決して、若者らしく爽やかにお互いに握手して笑顔で別れたら。」
社長「初めてやと。うちとしても、他の会社の社長に聞いても、18、19の人間が労働局に言って争うとするのは。そんなことしたら、お前、どこも雇ってくれんなるぞ。今度はうちの会社がやられるってみんな恐れて」
自分「…。」
人物「どうで?もう、社長さんのいう金額で手をうたんかえ?君がそう言ったら、私もこれから労働局の方へいって、こうこうこうで解決しましたのでと伝えて君の訴えを取り消してくるから。」
自分「(自分はこの時二人から囲まれるように次々に物を言われ、頭がパニックになり、出来るだけ早くこの場を立ち去りたいと思い出来る限り穏便に対応してくれることを願いつつ答えた)自分も表立って争うということは出来たらしたくありません。だけど、やっぱりココですぐに答えを出せと言われてもやっぱり出せないですし、社長のいう金額で納得できないので、労働局に対する訴えは取り消しますけども、今後社長と二人で金額について話し合っていきたいとは思います。」
人物「だからねぇ。ここで、何回も同じことを言ってるように、三日後とか一週間後とか期限を決めても一緒なのよ。これから先きみは結婚だとかなんだかんだで直に決断を背まられる時がくるでしょう。だけどそのたびに君はずっと考えるために待ってくれというんですか?同じなんですよ。君が労働局に対する訴えを取り消したとしても。社長の言われる金額になっとくが出来ないということは。」
自分「え?訴えを取り消して話合で解決しようとすることは子ども的な考えなんですかねぇ」
人物「だから、君はココで、イエスかノーかのどちらかしかないんですよ。社長の言う言葉に甘えて、訴えを取り消すか。社長の言われる金額に納得がいかないから、裁判でもなんでも起して戦うか。」
社長「●●よう、これは商売じゃないがぞ。最初1000円って言って、無理ですか、はい、それじゃ900円、800円ってよ。」
自分「はい、それは解ってます」
人物「それじゃ、どっちなのか、答えを言っていただけますかね。もし、君がここでハッキリしないのならば、これはもう社長も怒られて、席を立って帰るでしょう。そうなったら、もう後は戦うしかないんですよ」
店員「あのスイマセンそろそろ」
(ラストオーダーもとっくに済んでいたし、店を閉めたいらしく、店員さんが催促する)
社長・人物・専務「はい、もう終わりましたから。」
人物「さぁ、もう出ないかないし、私もこれから労働局の方へ行かなくてはいけないですから。さぁ、ここは大人になって…」
自分「(自分はこの時、とてつもなく大きな圧力をかけられているような感じがして、気分も悪くなり、とてもお互いに円満な解決になっていないことを感じつつも、早くここから脱出したいという思いに負けた。)はい、解りました。労働局への訴えは取り消します。お金に関しても社長のおっしゃられる金額で、それと、今日この席で自分が発言した子どもじみた発言などにかんしてはあやまります。」
人物「よっしゃ、解った。」
社長「解った。今日決めたことはお互いに文章にしちょった方が納得いくろ?」
自分「え?はぁ」
人物「それじゃ社長、来週の月曜日にでもこのことを文章にしてFAXしますので、あとは、そう、貴方にも判子押してもらわないけないからね、それは構わないよね?」
自分「は、はぁ」
人物「それじゃ出ましょう」




(それぞれ靴を履き店の外へと向かう)




自分「(これは誘導尋問になるんじゃないかとパニックになっていながらも必死で冷静になろうと思い、人物に)あのう、今回会ったのも何かの縁ですし、これから相談に乗って頂くこともあるかもしれないので、宜しかったら、名刺か何か頂けないでしょうか?」
人物「あいにく、今日は何も持ち合わせていないので、月曜日にでも文章と一緒にFAXしますわ。」
自分「はい、ありがとうございます。」




(外:店の入り口)




人物「それじゃ、これから頑張って。今日はお疲れ様。ありがとう(右手を差し出す)」
自分「はぁ、ありがとうございました(右手を差し出し握手を交わす)」
人物「それじゃ(車に向かう)」
社長「今日決めたことはちゃんと実行する。約束する。」
自分「はぁ」
(社長車に向かい歩き出す。自分も歩き出す)
社長「(振り返り)●●、お前何で来たがな?」
自分「バイクです」
社長「バイクか。何処に止めちゅうがな」
自分「会社の近くのコンビにです」
社長「おい、専務。●●をコンビにまで送っちゃってくれ」
人物「社長、これからどうなされるんですか?会社に戻られます?戻られるんでしたら、お送りしましょうか?」
社長「あぁ、すまん」




 そういった自分にとっては納得していないのに、半強制的にイエスと言わされた話合は終わった。自分としては、今回のこの一回の話合で答えを出さなくてはならないなんていうことは全くもって想像していたことではなく、やはり、相手の術中に落ちてしまったとしか思えないでいる。
 ココに記した話合の経緯は自分が頭を混乱させながらも、冷静でいようと努め、記憶していた内容ではあるが、それぞれの人物の喋った内容や言葉使いなどは一字一句全て正しいわけではなく、またその話の内容も、全てがそういう流れで喋ったわけではないのかもしれないことは実際問題としてありうることであり、そうだと自分でも思っている。
 今回のこの話合については話が長くなってしまったが、自分が意図していたこととは全く違ったもとなったことを始めとし、あらゆる箇所で反省すべき点は幾つかあり、もし、これを読まれている方の中で今後、そういった話合の席が設けられた場合には是非とも注意して頂きたいと思います。また、何よりも、先方が例え第三者の立場の人間だからといっても名刺も渡さないような人物は信用できないと思いますし、労働局を通して話合の席が設けられたのではない場合は出来るだけ参加しないようにしたほうがいいと思います。




 そして、実はこの話には続きが存在するのである。

*1:正確には去年に当たる

*2:自分の名前

*3:正確には、考案されたデザインに基づき、単に画面の作成、製品の製作等の業務を行う者は含まれない。