小さな物語#12

十二月×日

 年の暮れともなると誰もが白い息を吐きながら流れている。背中まであった髪を切ってしまったことを少し後悔するように眞子は、溜息を混ぜた白い息で悴む指を暖めながら信号が変わるのを待っていた。
 その小さく震えるとりわけ白い肌に赤色の口紅が遠くからでもハッキリと浮き上がって見え直に眞子だと気づき、横に付けるように自転車を止めた。それに気づいた眞子は
「おはよう。」
 と声をかけたが、
「チース。」
 とだけ答え顔も見ずに青に変わった信号を見て渡り始めた少年を冷たいやつだと思った。