小さな物語#8

二月八日火曜日

 午後になって雪が降り出した。比較的暖かいこの地域で雪が降ることは少ない。降っても年明け以降と大抵相場がきまっていた。
 少年は初雪だと思うのだが、世間では年が明けて降る雪を初雪とは呼ばないらしい。11月や12月頃に降る雪を初雪と呼び、年が明けてから一番初めに降る雪を初雪とは呼ばないことに少年は疑問を感じていたが、その“初”というのは年号などではなく、年度で言っているのではないかと最近思うようになっていた。
 雪が降っていることに気づいたようでクラス中がざわめきだした。
「あ、雪だ。」
「積もらないかなぁ?」
「積もったら雪氷食べたいね」
 なんてクラスの女子たちが次々に話す。
 雪が降るといつも誰かが決まって雪氷の話をする。その度に、雪って本当は汚いものだと教えられた授業を思い出す。